vol.1053 「『お客様との会話』こそ当店の魅力」 2010.11.10
のん太鮨パセーラ店 加藤 亮太
それは落ち着いたある日の夕暮れ時のことでした。この時間帯はレーンに流す皿を控えめにし、主にご注文をいただいてからご提供していたためか、『お客様との会話』も増え、話し好きな私(?)にとっては楽しい時間帯でした。
いつもは「最近寒くなりましたね。」「今日は雨がすごいですね。」など気候ネタで入り、その後はお客様のお話を聞かせてもらい、私が時折質問するというのが『王道パターン』なのですが、その日は一味違いました。
得意の気候ネタを出す前に「お宅、仲買さん?」と先制パンチ。恥ずかしながら『仲買さん』という言葉にピンとこず、期待を裏切りたくなかった見栄っ張りな私は、ありったけの知識を振り絞り、“『中で買う』?仲介ってこと?じゃあ違うなぁ”と推測し「NO」という答えを導き出しました。先制パンチで“自分は自分の会社の事すら上手く説明できない。”と思わされた痛恨の一撃でした。正直言うと「なかがいさんって誰?」と思っていました。
その後も「生で穴子の刺身食うたことあるか?」「お話では聞いた事ありますが実際は食べた事ないです。」「ワシもない。」と思わずツッコミたくなるやりとりや、「回転寿司のベルトコンベアの特許はもう切れたんだっけ?」とまさかのご質問に完全に翻弄されておりました。多分誰が見ても分かるくらい、その時の笑顔には余裕はなかったと思います。
“これは苦手なパターンだなぁ。”と思っていると「別にクレームじゃないけど、何でお汁のフタ持って行ったの?」とのご質問。それまで「フタいらないから下げて!」とおっしゃる方が多く“フタはお下げした方が気のきいた店員である。”と思い込んでおり、「ゆっくり飲みたいから、冷めないようにフタをしておきたい。」との理由を聞いて目が覚める思いでした。
その一言に、“私は本当にお客様の立場になって仕事をしていたのだろうか?”“今の自分は『知らない』ならともかく『知っているつもり』になって行動していたのでは?”と己の無知さに気づかされ、恥ずかしくて仕方がありませんでした。同時に、“苦手だなぁ”と思っていたのが、“今の自分がまだまだ未熟であることを気づかせていただいてありがたい”と思うようになりました。
お帰りの際、「今日は勉強させていただきました。ありがとうございました。」とお礼を言うと、「おう!そうかい。」とニコリ。「また来るよ。」と言っていただけました。改めて“私たちは『お客様との会話』を通じて成長させていただいているのだなぁ”と感じた出来事でした。
そう言えばその後、「高級な料亭ではフタさげたりしないよ。」とぽつり。
店長!これを機に後学のため高級料亭に行きましょう!店長のおごりで・・・(笑)
「そんな金ねぇ~。」(by店長)